「え、ここが面接会場……って、え? 座敷牢!?」
妹のため、少しでも条件のいい仕事をと必死で探していた鈴原朱巳(すずはら・あけみ)は、紹介された神社のアルバイト面接先に辿り着き、目の前の光景に言葉を失った。
神社の中、ひんやりとした空気に包まれた一角に、座敷牢。そしてその奥には、黒髪で冷たい目をした青年・清文が鎮座していた。
「俺は“みかがみ様”。この座敷牢から動けない。君に手伝ってほしいのは、“失せもの探し”だ」
この出会いが、朱巳にとっての“縁”の始まりだった。
「失くしたものは、思いと共にある」――静かな神域で紡がれる、心ほどける物語
清文は、神社の宮司の息子にして、“失せもの”を探し当てる力を持つ。だがその代償として、彼自身は“鎖”のような霊的制約に縛られて座敷牢から出ることができない。
「物が失せるとき、それには必ず理由がある」
朱巳は彼の言葉に戸惑いながらも、清文のもとで失せもの探しを始める。古い写真、破れた御守り、誰かが置いていったぬいぐるみ。
それぞれの“物語”に触れながら、朱巳は自分自身の中にあった“喪失感”と、静かに向き合っていく。
猫×神社×不可思議=癒しと余韻の極上スロー・ファンタジー
この作品の最大の魅力は、緩やかに流れる空気感。
猫たちは神社のあちこちに出没し、時に“失せもの”の在処を導き、時に朱巳の膝で丸くなる。猫好きにはたまらない癒しポイントが満載だ。
そして何より、清文とのやり取りにじわりとにじむ感情の変化。無愛想ながらも少しずつ打ち解けていくふたりの距離感が、静かに、確かに心に沁みてくる。
いずみ椎乃氏のイラストもまた、物語の空気感をそのまま閉じ込めたような優しさに満ちており、読む者の想像力をやわらかく広げてくれる。
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『猫神社のみかがみ様 あなたの失せもの、座敷牢から探します』は、ただのミステリーでも、ただのほっこり日常系でもない。
“失くしたものを探す”という行為の中に、人と人のつながりや、人生に必要な“何か”を丁寧に描く一冊。
猫と神様と不思議な縁を信じたくなる、優しい気持ちになれる物語。


