──「竜王が…人間の娘に、会いに?」
王宮の奥、漆黒の玉座に佇む竜王リベルトが、その日なぜか城外に姿を見せた。静かな森のほとり、小さなコテージに暮らす一人の魔女のもとへ。
歌声で魔法を紡ぐ魔女、オリヴィア。だが、彼女はもう歌えない。幼い頃に傷ついた黒竜を助け、その代償として声を失ったのだ。
「歌わずして魔法を使えぬ魔女など──役立たずだ」
そう言い放ったのは、かつての魔術評議会の誰かだったろうか。それでも姉と二人、静かに生きてきたオリヴィア。その日常を壊したのは、あの黒竜──今や竜王となったリベルトの再来だった。
“声”を持たぬ彼女に、“名”を呼ばせた男
リベルトが初めて彼女の前に現れた夜、月明かりの下で、彼は彼女の手を取った。
「オリヴィア…その名を、覚えている」
名前を呼ばれた瞬間、喉が熱くなった。失ったはずの声が、心の奥で震える。けれど出てこない。ただ、涙だけが頬を伝って落ちた。
リベルトは女性に興味がないと噂されていた。だからこそ、彼が頻繁に魔女のもとを訪れることは、竜王国の中でも大きな波紋を呼んだ。側近たちは焦り、姉妹を利用しようと画策する。だが──
「この声を失った魔女こそ、俺の花嫁にふさわしい」
竜王のその一言が、すべてをひっくり返した。
圧倒的ビジュアルと“切なさMAX”な演出に涙腺崩壊!
花散ここ氏のストーリー構成に、山下ナナオ氏の作画が加わることで、魔法のような世界が鮮やかに立ち上がる。竜王の孤独と誇り、オリヴィアの静かな強さが、コマのひとつひとつに丁寧に描かれている。
特に圧巻なのは、リベルトがオリヴィアを抱きかかえて飛翔するシーン。漆黒の翼が夜空を裂き、満天の星々がふたりの未来を照らすような構図は、まさに一枚の絵画のよう。
また、言葉を交わせない二人が、視線と指先だけで心を通わせていく描写の数々は、静かでいて心を揺さぶる。
「声がなくても、心は響き合う」──魔法のような愛の形
声を失ったオリヴィアと、心を閉ざしたリベルト。二人が交わすのは、言葉以上の想いだ。
“歌えなくても、あなたの心に触れられる”
そんなメッセージが、ページの奥からそっと語りかけてくる。
この作品は、単なるラブファンタジーにとどまらない。喪失と赦し、孤独と希望の物語なのだ。
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“もしも声を失ったなら、どうやって愛を伝える?”
その問いの答えが、この物語にはある。そして、読み終わったとき、あなたの胸にもきっと――あたたかな何かが、残る。


